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本文中に名前は一切でませんが一応マグビグ。
外では蝉の声が一層騒がしくなってきた。
自分はここにいるのだと、つがいとなるであろう相手に声を張り上げているようだ。
そんな外とは対照的に、室内では男女が重なり合っている。
・・・立ったまま、であるが。
さらに言うと、女の方はつま先で立ち、精一杯背伸びをして腕を伸ばしている状態。対に男は背伸びこそしていないが片腕を上方向に伸ばしている。
その手にあるのは、リモコン。
ジワジワと合唱を続ける蝉たちとじりじりと陽炎すら見え始めた中庭。
夏が一層猛威を振るっているこの状況下で、知識生命体は快適な生活を求め、クーラーという夏の神器を生み出した。
外界から切り離された天国とも呼べる空間は自然と生き物が集まりだす。
集まった分、様々な弊害が生じる。
詰まるところ、体感温度の違い。
「暑い、まだ暑いぞ」
「いやもう充分だ、むしろ寒い」
先ほどから男女はこの繰り返しをしている。
女の方が暑いと言い、男の方は寒いという。
「・・・脱ぐぞ」
「駄目だ」
「なら寄こせ」
「もっと駄目だ」
脱ぐと宣言した女は現在下着だけのような姿で、最早脱ぐものがない。裸になるぞとうい意味で言ったのだろう。
男の方は普段着に羽織りが追加されている。この部屋に来てから速攻で羽織っていたのは記憶に新しい。
そこで私はおや?と思うところがある。
男は女が脱ぎたがるのをしきりに止めていたが、この部屋に誰かが無遠慮に侵入してくることはまず無い。
なにせここは二人の寝室、世間で言う夫婦の部屋なのだから。
仮に女が裸でいたとしても、それを目にするのは夫である男だけではないか。
訳が分からぬと首を捻ってみるが、そういえばこの二人が寝所を共にしてから「夫婦の営み」というものを見た覚えがない。私など、この狭い空間でも伴侶がほしくて仕方ないというのに。
なるほどつまり、気恥ずかしいのか。
怖い顔をしているが、随分初心なのだなと、思わず笑ってしまった。
口からこぼれた空気がパチンと弾けた音で二人がこちらを向くが、私は何食わぬ顔をする。
「・・・なあ、」
「駄目だ」
「・・・暑いんだよ」
「水浴びでもしろ」
水浴びという言葉を聞いて、しょげかけていた女はその手があったと言わんばかりにパッと表情を輝かせた。
急いでタオルやら色々準備してかけて行く。その中に何故か水鉄砲が数丁。
「今暇なやついるか?出来れば二、三人「一人!水浴びは一人でやれ!もしくは俺と!!」
嬉しそうに駆ける女と慌てて追いかける男。
律儀に部屋を閉めて行ってくれて助かったが、それでも聞こえてくる騒がしさからして、この家の住人が集まりだすのは時間の問題だろう。
しかし水遊びとは羨ましい。水が茹だる心配はないとはいえ、私もたまには金魚鉢から出てみたいものだ。